【はじめに】
2019年12月末に中国湖北省武漢市で確認された新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に拡散し、今もなお収束の見通しは立っていない。このような状況の中で地震や風水害などによる災害が発生した際には多くの避難者が発生し、避難所等で受け入れることになるが、多数の避難者が一堂に共同生活を行う避難所では感染症が蔓延しやすく一層の感染症対策が求められる。また、従来どおりの避難所運営に伴う対応も感染症対策に加えて必要である。特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(以下、PWJ)は新型コロナウイルス感染症流行下で国内初の大規模災害となった令和2年7月豪雨に対して発災当日よりA県B村で支援活動を実施し、2次避難所の開設・運営支援を行った。その際の経験から保健衛生面での保健医療職の継続的なかかわりの必要性があると考えたので報告する。
【活動内容】
発災当日である7月4日よりA県B村での支援活動を開始した。活動を行っていたA村総合運動公園(半屋外型球技施設)では推定2~300人の避難者が土の上にブルーシートを敷いて過ごしており、電気や水道が使用できないような状況であった。7月6日に隣接するC市内の中学校に2次避難が決定し、同日中に計118名の避難者の受け入れを行った。PWJはA村や保健所職員と連携しながら運営本部での支援、避難所のレイアウト決めや役割分担、収容可能人数の算出、受付での検温や健康チェック業務、体調不良者への対応を実施した。避難所ではA村や保健所の保健師に加えてDHEATや災害支援ナース、AMDAやTMATなどのスタッフが活動しており、日中は医師1~2名、看護師3~6名、保健師5~6名、ロジスティクス3~5名いたが、夜間は行政職員2~3名が泊まり込み、問い合わせ業務に加えて配慮が必要な住民への対応に当たっていた。避難されている住民の中には高齢者や障がい者、在宅酸素、妊婦、乳児など配慮が必要な避難者も複数いる状況であった。特に介助を要する高齢者や障がい者は外部支援者のみでは十分な対応が困難で、家族もしくは被災者として避難してきている保健医療者や行政保健師が排泄介助や入浴介助などを行っているような状況であった。
【考察】
今回の避難所開設・運営では通常の避難所開設・運営に加えて新型コロナウイルス感染症への対応も必要であり、行政のみならず外部支援を合わせても人的資源が不足していた。特に夜間の看護や介護にニーズへの対応は困難で、被災者の中にいる保健医療者による共助によって今回は避難所運営が成り立っていたが、一部の被災住民へ過度な負担がかかる状況があった。今回の経験から、今後DMATやDHEAT、災害支援ナースなど公的な仕組みで支援する組織に加えて災害支援を得意とするNPO団体と合わせて保健医療職を含むボランティアが避難所へ支援に入るシステムがあれば避難所における切れ目のないケアの継続に繋がるのではないかと考える。
【結語】
新型コロナウイルス感染症下での避難所運営にはさらに支援者が必要であり、保健医療職ボランティアを含めた外部支援者の協力が必要である。
略歴
平成24年 川崎医療短期大学 卒業
平成28年 高知大学医学部看護学科 卒業
平成30年 高知県立大学大学院看護学研究科共同災害看護学専攻 入学
現在に至る
令和元年より特定非営利活動法人ピースウインズ・ジャパンの活動に関わり、メディカルチームの看護師として活動を開始する。専門は災害急性期における看護であり、博士論文としてDMAT看護師の災害時の役割について研究している。