2011年3月11日、福島は、東日本大震災の地震・津波による自然災害と、東京電力福島第一原子力発電所事故による原子力災害という、世界でも経験したことのない複合災害に遭遇した。現在も、被災者の心身の健康問題や生活再建、被災地の地域再生などを含め、多数の課題が残されている。さらに、このような未曾有の複合災害を契機に、緊急時から復興期まで長期にわたる健康被害に適切に対応できる看護職の育成の必要性も明らかとなった。このような現状をふまえ、放射線災害を含む複合災害に健康影響を鑑みながら対応できる人材を育成するため、被ばく医療学・放射線健康リスク制御学で実績を持つ長崎大学と、東日本大震災を経験し災害医療分野での実績と貴重な経験を有する福島県立医科大学がそれぞれの独自の実績と強みを持ちより、相乗的に総力を結集して『災害・被ばく医療科学』という総合領域を創生し、平成28年度修士課程に「災害・被ばく医療科学共同専攻」が開設された。
震災・原発事故から10年の節目を迎え、本交流集会では、災害現場の医療職の初動活動の実際を振り返るとともに、福島県立医科大学大学院医学研究科修士課程修了生・在学生から、被災した病院看護師による被災者支援・災害対応に関する研究、保健師による地域保健活動に関する研究等の分析結果をもとに、多角的・多面的にこの10年を振り返る。そして、参加者との意見交換を通して、災害時の看護職の役割と、福島のこれからの復興支援について一緒に考える機会とするとともに、この災害の経験と記憶を、防災・減災の教訓として、みらいへつないでゆくことを目的とする。